恋愛セミナー72【浮舟】第五十一帖 <浮舟-2 うきふね> あらすじ浮舟は相手が薫でないと気づき、惑乱しています。 以前思いを遂げられなかったことを訴え続けるので、匂宮とわかり中の姫への申し訳なさに泣きじゃくる浮舟。 朝がきても、やっと会えた浮舟と離れたくないと女房・右近を呼ぶ匂宮。 「今日一日ここにいる。供は隠れるように。私は他にはなにも考えられなくなっているから。」 匂宮は浮舟のためなら人になんと言われようとかまわない気持ちです。 右近は大内記に匂宮の言葉を伝え、他の女房達には「薫の君は道中何ものかに襲われて。」と言い、 部屋に「物忌み」の札を貼って近づけないようにしました。 母君の使いが迎えに来たのも、京に還してしまう右近。 一人でどう取り繕っていいか苦心しています。 匂宮はひらすら浮舟を愛しく思います。 いつも冷静な薫に比べて匂宮の情熱を好ましく思い、美しさもずっと優っているように感じる浮舟。 「私がいない時はこれを見て。」と匂宮は男女が供に横たわっている絵を描いて涙ぐみます。 「永く変わらない愛を頼みにしてもなお悲しいのはただ明日をも知らぬ命のこと。」と匂宮。 「移り変わる心ではなく、ただ命の短さのみを嘆くのです。定めなき世とわかっていますから。」と浮舟。 匂宮は浮舟にますます溺れてしまうのでした。 夜になって大内記か迎えにきたので、「思うように動けない自分の立場が疎ましい。」と匂宮は重い腰をあげました。 「こんな気持ちは知らなかった。涙で道が暗くなるほどの惑いは。」と浮舟を抱き寄せて詠む匂宮。 「涙を隠すことさえできない私の小さな袖でこの別れをどう留められましょうか。」と哀しく返す浮舟。 京へ戻りながら、宇治はなぜこうも切ない恋に縁があるのかと思う匂宮なのでした。 二条院に戻っても、匂宮は隠し事をしていた中の姫に会いたくないと自室に入ってしまいましたが、 すぐに侘しくなって、中の姫のもとへきてしまいました。 中の姫が浮舟と比べても美しいのを認めつつも、面差しがそっくりでつい宇治での出来事を思い出してしまいます。 「私が死んだらあなたは薫の君のもとに行くのだろうね。これほど愛しているのに私に秘密があるのだから」と機嫌悪く言う匂宮。 薫のことで何か言われたのかと思い、情けなくなる中の姫。 浮舟のことは伝えずに、薫のことで怒っているように見せかける匂宮なのでした。 その日の夕方、匂宮の具合が悪いと聞いて薫が二条院を訪れます。 「聖人君主の振りをした生臭坊主め。浮舟を宇治に長いこと放っておくなんて。」と、いつも真面目ぶられ 浮気沙汰を咎めれられてきたことを疎ましく思う匂宮。 薫が親身に匂宮を気づかって帰るのを見送りながら、浮舟はどちらがいいと思っているのだろうかと何かにつけて 宇治を思います。 石山寺に行けなくなったので、宇治では皆、暇を持て余している中、匂宮からは情熱的な文が度々やってきます。 「私の昔の恋人が元のさやに収まろうとして。」と右近は必死に周りをごまかし続けるのでした。 恋愛セミナー72 1 匂宮と浮舟 思いを遂げて 2 薫と浮舟 知らぬ間に 3 匂宮と中の姫 帰る先 匂宮の情熱が噴出する場面です。 普段、行動範囲が抑えられてしまっている分、一端羽目をはずすと止め処がなくなる行動。 周囲の人間はそのフォローにおおわらわです。 浮舟も、ただ翻弄されているだけではありません。 波間に漂うような頼りなさを見せながら、薫よりも情熱的な匂宮に惹かれ、心が傾く風情。 別れる間際も、匂宮の心に深く残る言葉を発する。 ただ情熱に任せ、奪いにやってきたつもりの匂宮が、足元をすくわれてしまうほどに。 薫への友情も浮舟への思いにすっかり忘れてしまったようです。 こんな時でも、一人になるのが耐えられない匂宮。 妻の妹に逢ってきたその日にも、やはり足を向けてしまう。 そして相手のことを思い続ける。 中の姫は他の女性の移り香を残した匂宮を、どう受け止めてゆくのでしょうか。 |